相続分の譲渡が特別受益になるか
2018.07.23更新
平成29年7月6日付の東京高等裁判所の判決です。
この事例は、父の相続にあたり子が母から法定相続分を譲り受けた場合、母の相続開始による遺産分割において、この相続分の譲渡が特別受益になるかが争点となりました。
結論としては、特別受益になるということでした。
特別受益という制度のは、共同相続人の誰かが
・遺贈
・婚姻もしくは養子縁組のための贈与
・生計の資本としての贈与
を受けていた場合、これらで受け取った財産も亡くなった方の財産であると仮定して、相続での取り分を決めましょうという制度です。
実際に遺贈や贈与を受けたいた資産のことを特別受益といいます。
大抵の事案では、生計の資本としての贈与が問題となり、争いになります。
本件の裁判例では、母が亡くなった際の相続人間で争いが起きました。
母が亡くなる前に父が亡くなっていたのですが、その際に、相続人の一部が母が父より相続を受ける権利(相続分)の一部の譲渡を無償で受けていました。
父の遺産総額は9,000万円強ありました。
共同相続人間で、協議した結果、特定の相続人のみ多く相続するようにするというのはよくあることです。
その際に、全員で遺産分割協議書を作り、特定の相続人のみ相続する財産を増やしたのであれば、特別受益の問題とはなりません。
本件のように、母から特定の相続人に「相続分を譲渡」すると特別受益に該当することになります(絶対に特別受益になるということではありませんが、大半でそうなるでしょう。)。
相続分の譲渡というのは、Aの法定相続分1/2のうち全部又は1/3を譲渡するというような約束をAとその他の相続人らで合意して譲渡する方法です。これを無償でやれば、それは贈与でしかなく、生計の資本としての贈与になるということです。
遺産分割協議により、特定の相続人のみ多く相続したという場合は、遺産という全体を相続人全員で合意して、法定相続分とは違った形で分配したというに過ぎませんから、誰かが多く相続していたとしても、他の相続人から贈与されたということにはなりません。
相続分の譲渡は、割と広く行われていますが、父の遺産相続の際は円満だった兄弟姉妹間も母の遺産相続の際には険悪になっており、相続分譲渡が特別受益であるとして争いが生じる可能性はあるかとおもいます。
こういった点も相続分譲渡で処理する際には、考えておいたほうがいいでしょう。
遺産についても幅広く取り扱っておりますので、遺産分割等についてお困りの際は、当事務所までお気軽にご相談ください。
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